肉離れ(にくばなれ)とは?

肉離れ(にくばなれ)とは?

いわゆる「肉離れ」とは、全力で走っている最中や急なストップやターン、ボールを蹴った瞬間などスポーツ動作中に生じる痛みで、急に筋肉が切れたような感じや力が入れにくくなったりする筋肉の損傷です。
似たような症状で、「こむら返り」「足がつる」といった筋痙攣、筋に連続するアキレス腱などの腱断裂、「ももかん」と言われるような打撲して生じる筋挫傷があります(図1)。
全身の筋肉で生じる可能性はありますが、サッカーでは太ももの後ろの大腿二頭筋(ハムストリング筋)、太もも前の大腿直筋に好発します。その他ふくらはぎの下腿三頭筋や股関節周囲の内転筋や短外旋筋群にも生じます(図2)。

図1 肉離れの種類
(日本整形外科スポーツ医学会、スポーツ損傷シリーズ)

図2 肉離れの好発部位

肉離れかな?と思ったら(現場での応急処置)

痛みを感じたら直ぐにプレーを中断し、部位を確認した後RICE処置)を行います。
こむら返りの場合は給水やストレッチで多くの場合改善し、再びプレーする事が可能になります。
肉離れの場合、関節に近い部位では筋肉や腱の断裂が起こることがあります。どこの部位をどの程度痛めているのかで対処の方法や治療期間が変わってくるため、歩行が困難など症状が強い場合は直ぐに整形外科(スポーツ外来がある医療機関がお薦め)を受診しましょう。
強い打撲による筋挫傷はサッカーでは太ももの前面に多く起こります(いわゆる「ももかん」)。この場合は、単なる安静だけで放置しておくと膝が曲がらなくなることもあるので、受傷後なるべく早期から特別な肢位での安静冷却固定が必要となります(図3)。

図3 「ももかん」の場合は膝を曲げてしっかり圧迫と冷却をおこなう

きちんと治すためには正確な診断と適切な治療期間が大切

肉離れの重症度は痛みが出た状況や部位の確認とともに図のようなストレッチ検査である程度評価することができます(図4)。

図4 肉離れの重症度検査(ストレッチ検査)

(日本整形外科スポーツ医学会スポーツ損傷シリーズ)

超音波エコー検査はその場で診断できるため有用ですが、正確に筋損傷の場所と程度を診断するためにはMRIが必要です。MRIは受傷後直ぐに撮影する必要がある場合は少ないですが、復帰時期を定めたり、治療プランを立てる上では有用な検査です(図5)。

図5 右大腿直筋肉離れ。大会中に受傷、痛みを我慢してプレーを継続したため重症化してしまった
(左側の白い部分が全て筋肉内の出血部位)

MRI検査では筋肉内の損傷部位によって1~3型に分類されており、それに応じて治療にかかる期間も変わってきます(表1)。

損傷部位 およその治療期間
1型 筋、筋膜 1~3週
2型 筋腱移行部 3~16週
3型 腱付着部 4~6か月

表1 MRIによる肉離れの分類と治療期間

筋損傷は試合中でも練習中でも、また疲れていても調子が良くても起こりうるため、全て未然に防ぐことは難しいです。痛くないからといって不十分な状態で復帰すると再発し、治療に時間がかかり長期化してしまう恐れがあります。 さらに肉離れを繰り返すと選手生命に影響するような機能障害を残こす恐れもあり、日ごろから推奨されるストレッチや筋トレを実践して予防に努めていくことが重要です(図6)。

図6 ノルディックハムストリングで太ももの裏を鍛える。

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